源氏物語~紅葉賀~(6)


源氏物語-紅葉賀

少納言の乳母は、

「思いがけず素晴らしい世界を見ることになったなあ。これも亡くなった尼上がこの姫君のことをお思いになって勤行に励み、仏様にお祈り申し上げていた御利益だろうか」

と思うと同時に、左大臣家のご内室が非常に高貴でいらっしゃり、また、光る君があちらこちらにたくさんの愛人を作っていらっしゃるのを、

「姫様が成長して大人におなりになる頃にはやっかいなことも起こるだろうか」

とも思っていましたが、しかし、このように格別なご寵愛のほどは信用してよさそうに思われますよ。

母方の喪に服するのは三ヶ月ということになっていたので、大晦日に喪服を脱ぎなさるのですが、その亡くなった祖母の他には親らしい人もおりませんでしたので、喪が明けてからも華やかな色合いではなく、紅、紫、山吹の生地だけで織った御小袿などをお召しになっている姿はたいそう今風で素晴らしくございました。

光る君は正月の参賀にお出かけなさるといって、その前に紫の君の所にお立ち寄りになりました。

「今日で一つお年を召して、おとならしくおなりでしょうか」

といって微笑みなさるのがとても素晴らしく、魅力的でいらっしゃいました。

紫の君はというと、早くも雛人形を置いてせっせと遊んでいらっしゃいます。

三尺の大きさの一対の棚にさまざまなものを飾り据えて、また光る君が雛人形のための小さな家をいくつも作ってさしあげなさったのを盛大に広げて遊んでいらっしゃいました。

「昨夜の『鬼やらい』の時に、いぬきがこれを壊してしまいましたの。だから私が直そうと思って」

と、雛人形の家をとても大切なものに思っていらっしゃいます。

「本当にそそっかしいことですね。すぐに修繕させましょう。今日は元旦だから泣いてはいけませんよ」

といって、仰々しいほどお供を随行させてお出かけになる様子を女房たちは縁側の方まで出てお見送り申し上げていましたが、紫の姫君も同じようお見送りなさった後、光る君の人形を飾り立てて内裏に参上させたりして、相変わらず遊んでいらっしゃるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


少納言というのは紫の君の乳母で、一緒に光源氏の邸宅に移ってきた人でした。(こちら参照)

そして「いぬき」はけっこう有名な紫の君の遊び相手の女の子で「犬君」と書きます。

雀の子を逃がしてしまうシーンが有名で、すでに出てきています。(ここ

では今回はここまで。

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