源氏物語~若紫~(8)


源氏物語-若紫

女の子は幼いながらも、さすがに尼君を見つめたあと、しょんぼりと下を向きました。

こぼれるように前に垂れた髪の毛は美しく艶があって素晴らしく見えました。

生ひ立たむありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えむ空なき
〔これからどこでどのように成長していくのかも分からない、若草のような姫君を後に残しては、露が消えるようには簡単に死ねないという気がすることです〕

また、そばに座っている女房も、「本当に・・・」と泣きながら、

初草の生ひゆく末も知らぬまにいかでか露の消えむとすらん
〔芽生えたばかりの初草のような姫君がどのように成長していくかも知らずに、どうして露のように消えようとなさるのでしょうか〕

と申し上げるうちに、僧都がむこうからやって来て、

「ここは外から丸見えではありませんか。まあ、今日に限ってこんな端の方にいらっしゃったものですね。

この上に住む聖の所に、源氏の中将が、熱病の祈祷のためにいらっしゃったということを、

私もつい今し方聞きつけたところです。

人目につかないよう厳重に警戒していらっしゃったそうで、

私もまったく知らずに、こんな近くにいながら、まだお見舞いにも伺っておりません」

とおっしゃると、

「あらまあ、たいへん。この醜い姿を見られてしまったかしら」

といって、簾を下ろしてしまいました。

「世間でその美しさが大騒ぎとなっている光源氏様を、このような機会に拝顔なさってはいかがですか。

私のような世を捨てた法師の心にも、あまりの美しさに世の中の愁えも忘れ、

寿命も延びるような気がする、それほど素晴らしいお方ですよ。

さて、では私はご挨拶に伺うとしましょう」

と言って立つ音がしたので、光る君もお戻りになるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


うーむ、今回もまた捕捉するほどのことはないですね。笑

あ、強いて言えば「光源氏」という呼び方が初めて出てきたような気がします。

僧都のセリフで

この世にののしり給ふ光源氏、かかるついでに見奉り給はんや

というのがあります。

たぶん、初めてじゃないかな、っていう気がします。

違ったらごめんなさい。笑

 

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