「ではその子だったのか。天皇家の御血筋だから藤壺様の面影があったのだろうか。
家柄も高貴で素晴らしく、なまじっか変な知恵もまだないようだから、今のうちから親しくなって、
私の理想の女性になるよう育ててみたいものだ」とお思いになっておりました。
「それはたいそうお気の毒な話ですね。その娘には子はいらっしゃらなかったのですか?」
と、幼い少女の将来を考える上でも、いっそう確かなことを知りたくてお尋ねになったところ、
「亡くなる少し前に一人生まれました。それもまた女の子でして。
年老いた尼君はその子の行く末を心配しておりまして、それが物思いの種となって嘆いているようです」
と申し上げなさるので、光る君は「やはりそうか」とお思いになりました。
「変な話に聞こえるかもしれないが、私をその少女の世話役にするよう尼君に申し上げてくださいませんか。
私には正妻もいるのですが、どうにも心が寄り添わないようで、一人で過ごしてばかりいるのです。
幼すぎて似つかわしくないのに、と私のことをみっともない人間だとお思いになるでしょうか」
などとおっしゃると、
「いえ、非常に嬉しいお言葉です。
しかし、まだひどく幼い年ごろですから、戯れにでもご覧になれば見苦しいかと存じます。
もっとも、女というのはよい男にもてはやされて一人前になってゆくものですからね。
私からはっきりとお返事を申し上げることはできません。
例の尼に相談して、そちらからお返事を申し上げることにしましょう」
とまじめに言い、堅苦しい様子でいらっしゃるので、
光る君は若いお心にきまり悪く感じられて、上手い返答がおできになりませんでした。
「阿弥陀仏がいらっしゃるお堂で勤行をする時間です。
まだ初夜のお勤めをしておりませんので。それを終えてまた参りましょう」
といって、お堂にお出向きになりました。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
発動しました、光源氏計画。
しかし、光源氏もまだ及び腰という。
さて、いよいよ少女の素性がはっきり描かれたので系図にしてみたいと思います。
かな~り複雑になってきましたね。汗
このお話に関係のない夕顔や空蝉については消していますが。
光源氏が自分の手元に置いておこうとしている少女は、憧れの女性・藤壺女御の姪にあたるわけです。
とりあえず、それだけ分かっていただければ良いと思います。
では今回はこの辺で。
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