源氏物語~賢木~(22)

紫の姫君は、留守にしていた数日の間にますます成長なさったような感じで、たいそう落ち着いていらっしゃり、「この先どうなってゆくのだろうか」と案じていらっしゃる様子がしみじみ心苦しく思われます。

光る君の不実なお心が、様々な女性たちのために乱れているのを見透かしていらっしゃるのか、先日の歌に「色かはる」とあったのも、光る君にはいじらしく思えて、いつもより熱心にお話しをなさいました。

お土産としてお持ちになった紅葉した枝を二条院の庭のとお比べになってみると、とりわけ色濃くございました。

御自身の御心もこのように藤壺中宮に深く染めているのだということに改めて思い当たると、そのお気持ちを放ってはおけず、あまりのご無沙汰も体裁が悪いように思われ、ただ普通のお土産としてこの紅葉の枝を藤壺中宮に送って差しあげなさいました。

藤壺中宮に仕える王命婦には、

「参内なさったことを、珍しいこととしてお聞きしていましたが、中宮様のことも春宮様のことも心配で、落ち着かない心ではあったものの、仏の道の修行をしようと心に決めた日数を放り出して帰るわけにはいかないと思っているうちにご無沙汰してしまいました。紅葉は独りで見ておりますと素晴らしさも半減してしまうのでお送りいたします。ちょうど良い折に中宮様に御覧に入れてください」

などとございます。

本当にすばらしい紅葉の枝ぶりだったので、中宮様も目を惹かれなさったのですが、例によってちょっとした文が結ばれているのでした。

それを女房たちが読んでいるので中宮様は顔色もお変わりになって、

「いまだにこのようなお心をお持ちでいらっしゃるのが本当に嫌だわ。思慮も深くていらっしゃるあの方が、思いがけずこのようなことを時々なさるのが惜しいこと。女房たちも奇妙に思っているでしょうに」

とお思いになると気に入らない感じがして、枝は瓶にささせて廂の柱のもとに遠ざけなさるのでした。

世間一般のこと、春宮のことに関してだけは、頼みに思っているということをしっかりとお返事にお書きになりました。

一方で、光る君については何も言及がないので、「何ともはや。聡明でいらっしゃることだ、果てしなく」と、恨めしくお思いになりましたが、何事においても後見し申し上げなさることが習慣となっていらしたので、「人が奇妙だと訝しむかもしれない」とお思いになって、中宮様が退出なさるご予定の日に参内なさるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳です。


紫の姫君が心配で帰ってきた光源氏はさっそく紫の姫君とゆったり時間を過ごした後、さっそく藤壺の宮のところにちょっかいを出すのでした。

まったく、どういう神経をしているのでしょうか?笑

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