源氏物語~末摘花~(28)


源氏物語-末摘花-

その装束は、色こそ今風でしたが、耐えがたいほど古臭くて品のない、表地も裏地も濃い同じ色で、

ひどく平凡な直衣の裾が見えていました。

呆れたことだとお思いになった光る君が、その手紙を広げて端に何かをお書きになるのを横目に見ると、

なつかしき色ともなしに何にこの末摘花を袖にふれけん
〔心惹かれる風情でもないのに、どうして末摘花を手にしてしまったのだろう〕

色の濃いハナに見えたが」

などと書き散らしなさるのでした。

末摘花に喩えて悪く言うわけをあれこれ思い巡らせて、たまに月明かりに拝見した姫君のお顔を思い浮かべると、

その言われようを「おかわいそうに」と思いつつ、おかしくも思われました。

くれなゐのひとはな衣うすくともひたすらくたす名をし立てずば
〔一回しか染めていない衣の薄い色のように、赤い鼻の姫君への愛情が薄かったとしても、評判を傷つけるような噂さえお立てにならなければ〕

心苦しいことだわ」

と、たいそう慣れた様子で独り言のように詠むのは、出来の良い歌ではありませんでしたが、

「姫君にも、これくらい平凡でもいいから歌を詠む素養があればよかったのに」と心から残念に思われるのでした。

家柄が高貴であるだけに、評判を貶めるのはさすがに気の毒でございます。

女房たちが参上するので、

「衣装箱は片付けようか。このようなことを私がしていたらおかしいだろう」

とため息まじりにおっしゃるのでした。

「どうしてお目に掛けてしまったのだろう。これじゃあ私まで無風流みたいだわ…」

と今さらながら恥ずかしい気がして、そっと退出しました。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


ここで、常陸の姫君の通称が「末摘花」と決まります。

以前にも書いたかも知れませんが、末摘花とはベニバナのことです。

この辺りの和歌に出てくる「はな」は「花/鼻」の掛詞になります。

姫君の鼻の先端が赤かったので、このベニバナに喩えられてしまいました。

それから、大輔の命婦の歌に出てくる「ひとはな衣」というのは、三省堂詳説古語辞典によると、

一回染めただけの、薄い色の衣。

とのことです。

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