源氏物語~葵~(2)


源氏物語-葵-

「女に恥をかかてはいけない。どんな女も丁重に扱って、恨みを買うことなどないように」

と桐壺院がおっしゃるのにつけ、

「万が一、藤壺様へのだいそれた思いをお知りになった時は…」

と恐ろしかった光る君は、恐縮して院の御所を退きなさるのでした。

また、こうして六条御息所とのことをお聞きになった院がこのように苦言を呈しなさるので、御息所の名誉を考えると気の毒な気でもあり、また自分自身が浮気っぽい者であるようなお気持ちになるのでした。

従って、ますます大切にしなければいけないお方であり、おいたわしいことだとは思い申し上げなさるのですが、まだ表立って公式な関係としてはお扱いになりません。

御息所の方でも、光る君との不釣り合いな年齢をきまり悪くお思いになって心をお許しにならない様子なので、それに気兼ねしているように院のお耳に入れ、世の中の人もこのことを知らない人はいないほどになってしまったにも関わらず、光る君の愛情が浅いことをお嘆きになっておりました。

このようなことをお聞きになった朝顔の姫君は、「自分はそのようにはなるまい」と深くお思いになるので、光る君から届くちょっとしたお手紙に対しても、決してお返事をせずにいたのです。

だからといって、みっともなく嫌な感じに光る君をお扱いになることもないのを、光る君の方でも、「やはり格別な方だ」と思い続けていらっしゃいます。

左大臣家では、光る君のこのように浮気なお心を気にくわないことだとお思いになっていましたが、あまりにあけすけな光る君の態度に、言う甲斐もないと思っていらしたのか、そこまで深くはお恨みになっておりません。

この頃ご内室は、つらく切ないお気持ちのまま懐妊なさっており、気分が優れず、何となく心細く思っていらっしゃいました。

これにより、光る君は珍しくご内室のことを愛しい者とお思いになり、また、両親を始めとして誰もかれもが嬉しく思いつつ、出産による他界という不吉な心配もあり、様々な精進潔斎をさせなさっています。

このような時期でしたので、光る君はお心に余裕がなく、愛情がなくなったわけではないのですが、六条御息所を始めとした愛人たちの所へはますます足が遠のくようでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳です。


前回に続いて六条御息所の話から始まりますが、朝顔の姫君が出てきて、最後はいきなり葵の上が妊娠しているという、驚きの展開です。

朝顔の姫君って以前にも出てきたことあったっけ?

と検索してみたら、早々と第2巻「帚木」の巻にチョロっと名前が登場していました。

式部卿の宮の姫君、ということで皇族なのですが、光源氏の従妹にあたります。

源氏系図-葵2-

源氏系図-葵2-

式部省の長官が式部卿なのですが、これは親王しかつけないポストだったそうで、詳しくはこちら

いつのまに葵の上が懐妊したんだ、というのはさておき、両親が不吉を感じて精進潔斎をさせています。

当時は出産で亡くなることも珍しくなかったためです。

以前、藤壺の宮が現春宮を出産する時に、光源氏があちこちの寺に加持祈祷を依頼するシーンがありました。

ではでは、今回はここまで。

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